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いい展覧会に行ってきたんですよって話。


とういうわけでこんにちはこんばんはおはようございます、井中まちです。

どこのなんていう展覧会に行ってきたんだよっていうのは写真をご覧いただければと思います。

なんで文字で書かないかっていうと、文字情報は公式のSNSアカウントとか関係者の方とかに捕捉されやすく、そうすっと私の精神にあんまりよろしくないからです。

特にこういう繊細な部分のある展覧会だとね。察してくれ。

 

そんな個人的事情はさておき、いやー、よかったです。

どんな展示内容かというと、「日本最古の異性装」の記録が残る倭建命から現代のドラァグクイーンまで、実在する(した)異性装者、芸能や創作の中での異性装、歴史の中での扱われ方、変化する「異性装」、表現としての異性装……などを時代順に追っていくという感じ。

美術館というよりは博物館っぽい展示だったなーと思います。とにかくパネル解説がびっしりで充実してた。

「説明して!ちゃんと全部説明して!説明してくれなきゃわかんないよおおおお教えてよおおおおおお!!」という、私のような全部説明してくれくれマンには大変ありがたい展示スタイルでした。助かる。

 

いやしかしなにがよかったって、終始フラットな視点が保たれていたのがマジでよかったです。

 

以前まったく別の場所(博物館)で日本史の中のジェンダーに関する特別展を見たんですが、どうにも視点が偏ってる感じがして居心地が悪かったんですよね(厳密にいうと今回見てきた展覧会とは扱ってるテーマが違うので、単純に比較はできないんですが)。

その特別展は、ほぼほぼ女性蔑視や搾取される女性たち(に至る日本史)についてしか語られていなかったんです。

いやもちろん大事なんですよ、それを知るのも。知って考えるの大事。ものすごく大事なんだけれども。

ジェンダーの日本史というからには、あるひとつの視点に偏ってちゃだめだと思うんです(個人の考えです)。

古代は指導者・支配者側になることの多かった女性が次第にこんなに抑圧されるようになった、搾取されてきたっていうけど、じゃあどうしてそうなったのか。男性はどうだったのか。抑圧、搾取されてきた男性はいなかったのか。性差はすべての女性に「不幸」だけを与えるものだったのか。そもそも性のあり方を完全に二分化しようとするジェンダー論をどうとらえるべきなのか。

私は生物学的にいうとメスですが、セクシュアリティはクエスチョニング(性自認や性的指向が定まっていない、もしくは意図的に定めていない)ということになるらしいです(簡易的な診断による結果だし、自分自身いろいろとあまりよくわかってはいません)。

そんな私としては、その特別展は「あなたも女性ならば声をあげるべき、こんな歴史に憤るべき」と言われているようで本当に居心地が悪かった(そんな意図はないと思うんですが)。

展示の最後に「ジェンダーにとらわれない自由な生き方を」みたいなメッセージがあったんですけど、「いやそんな展示内容だった?逆にジェンダー押しつけようとしてなかった?」って思ってしまったんです(いや本当にそんな意図はないと思うんですが。でもよく考えたら逆にそれが狙いだったのか?)。

なんというか私個人の意見としては、「意義のある特別展ではあるけど、ちょっとタイトルのつけ方が違ったかな」って感じだったんですね。

 

そういうもやもやが、今回は一切なかったんですよ。

でもしっかり考えさせてくれる展示だった。

見る側に全部ゆだねてくれる展示だった。それがよかった。

 

日本人はなぜ神話の時代から脈々と異性装を受け継いできたのか。

異性装になにを求めるのか。

異性装の先になにを求めるのか。

今の時代、なにをもって異性装とするのか。

そしてこれからは。

 

この展覧会自体に答えはありません。

いやそりゃそうだろうよって思うだろうけど、実際押しつけがましい展示ってけっこうあるからね……ほんとにフラットな展示って貴重だし大事なのよほんと……な……。

 

展覧会最初の「ごあいさつ」にもあるように、紹介されている「日本における異性装」は網羅的なものではなく、その一端にすぎないのだと思います(詳しくないから断言できんけど)。

でもぜんぜん物足りないとかそんなことはなく、むしろけっこうなボリュームで、紹介されているものだけでも考えるきっかけになるにはじゅうぶんでした。

いい展示だった……(大事なことなので何度でも言います)。

個人的にはほぼなんにも知らなかったドラァグクイーンについてちょっとでも知れたことがよかったような気がします。

ドラァグクイーンって異性装とはちょっと違うんだな。なるほどな。

あと直前に地元の伝統芸能まつりで異性装をしこたま見ていたので(祭りを含む伝統芸能にはめちゃくちゃ異性装が多い)、なんかこういい感じにつながりました。私のスケジューリング能力、天才的だな。

 

そういえば私は超初心者ながら着物を着ることを趣味のひとつとしているんですが、着物(長着)って広げた状態だとほぼ性差がないんですよね(裾の長さや身八つ口と振りの有無などの違いはありますが、これも時代によってはなかったりするらしい)。

主に帯や小物などで性差を際立たせている感じ。お子さんの浴衣姿とかだとより性差がないですね。

だから男性が女性物を着ていたり、女性が男性物を着ていたりすることもわりとよくあるし、帯や小物だけ異性用のものを身に着けたりする方もいらっしゃいます。

和服は比較的、異性装や中性的な装いがしやすい衣服なのかもしれません。

素人の個人的な感覚としてはより古い時代のほうが衣服の性差が顕著なような気がするので、そこらへんもっと調べてみたらいろいろ発見がありそうだなと思います。

 

なんかまあだからとりあえず、いい展示だったんですよ……。

ちょっとでも興味があるなって方は行ってみていただきたいなと思います。

渋谷めちゃくちゃ怖かったけど。

渋谷めちゃくちゃ怖かったけど、美術館周辺は静かでよかったし。

渋谷駅周辺はマジでめちゃくちゃ怖かったけど。都会こわい。ニンゲンの行くところじゃない。

 

あと美術館あるあるなんですが、めちゃくちゃ冷房きいてて寒かったので、暑い日でも上着を持っていかれることをおすすめします。

音声ガイドはなかったです。

図録も2,000円でお買い得だし、関連書籍もいっぱい置いてあったよ(もちろん買ったよ)。

 

とうわけで、いい展覧会でした。

よかった、ほんと。